室内の音響について
私は数年前まで防音工事の営業をしていました。
現在は全く関係ない部署に転勤になりましたが・・・。
そこで得たノウハウと経験に基づき記載してみたいと思います。
1.なぜ、室内音響が大切か?
仕事の研修の中で無響室を見学する機会がありました。
全く残響のない部屋・・・2m程離れた人と、怒鳴るような声を出して会話をした記憶があります。私たちがオーディオを聞くときに耳に入ってくる音の半分は、床・壁・天井等を反射してきた間接音なのです。
良い音を聞くために、音源となる良いオーディオ機器を持つことはもちろんですが、それを生かすも殺すも部屋にかかっていると言っても過言ではないと思います。
高い機械を買ったのに、納得する音が出ない・・・もしかしたら「部屋」のせいかもしれません。
2.部屋のチューニングをしてみよう
外部からのノイズをシャットアウトし、フォルテシモを鳴らしても安心な防音室を作り、同時に音響設計をするというのが理想ですが、数百万円の費用がかかるためなかなか実現は難しいと思います。そこで手軽(でないものもありますが)に出来るチューニングを考えてみたいと思います。
| 部屋を選ぶ | 家の中にはいろいろな広さや形の部屋があります。その中で、どの部屋をオーディオルームとするか? 共鳴周波数の影響を避けるため、4帖半や8帖といった正方形の部屋は避けます。 部屋が箱状である以上必ず寸法に対する共鳴周波数存在しますが、縦・横・高さの寸法比によって決まる共鳴周波数が重ならず、きれいに分散している部屋が音に癖が出なく理想といえます。 ひとつの理想として、1:1.26:1.59というのがあります。 実際の部屋の寸法としては、(奥行き)4.56m:(幅)3.60m:(高さ)2.86m(約10帖)となります。 一般的な家ではちょっと不可能な天井高ですが、これから新築等でオーディオルームの検討をしている人は、参考にしてみてください。 ある音域だけが飛び出している、または引っ込んでいるというのは、部屋の形の影響かもしれませんよ。 また、対策が吸音となるため、出来るだけライブ(残響時間の長い)な部屋を選んだ方が良いと思います。 |
| 残響時間を調整する | 一般的に、クラシックにはライブ(残響時間の長い)、ロック・ポピュラーにはデッド(残響時間の短い)の部屋がよいといわれています。もちろん好みもあるので、最終的には自分で決定します。 部屋に置く家具を考える 家具がまだ何も入っていない部屋に入り会話をすると、ものすごく音が響く(残響が長い)といった経験はありませんか?しかし、家具が入ってからは違和感がない・・・。そう、家具等は音を吸音するのです。また、家具を置いて部屋の形を不整形にすることにより、共鳴周波数の影響をコントロールすることが出来ます。 ・タンス、サイドボード等は低音を吸音します。 ・ソファー等は材質によって違いますが、中・高音を吸音します。 ・カーテン・カーペット等は、高音を吸音します。カーテンは厚手のものを使用し、ガラスにぴったり付けると高音のみ、ガラスから離して(100mm程度)取り付けると中音域まで吸音するようになります。 残響が多すぎればこれらを設置して吸音すればよいわけです。逆に少ない場合は、よけいな物を部屋の外に出すしかありません。また、カーテンは開閉によりコントロールが出来るので便利です。 |
| 有害な音の発生を防ぐ | フラッターエコーを防ぐ 向かい合った壁、あるいは床と天井で反射した音が干渉し、音が濁る現象がフラッターエコーです。これは、部屋の中で「パン!」と手をたたくことによって調べられます。「ビーン」と濁った残響が残るようであれば、それがフラッターエコーです。オーディオ再生時には、高音域の濁りとして感じられます。 ・対策としては、平行する面のどちらかを吸音面とすることです。カーテンを吊る・壁にポスターを貼る(少したるんでいた方がよい)、また、床と天井の場合はカーペットを敷くなどです。 低音域のブーミングを取り除く 低音域がこもる・解像度が悪いという場合には、部屋の隅で「あー」と低い声を出してみましょう(男声のみ)。妙にこもるようであれば吸音が必要です。 ・低音域を吸音するのは容量が必要となります。とりあえず段ボール箱に毛布を詰めてスピーカの裏の隅に置いてみましょう。ひどい場合は何個か必要になるかもしれません。この箱の効果は、浴室のような音の響く場所で会話をしてみればよくわかります(男声のみ)。箱がある状態と無い状態では、残響がだいぶ違うはずです。 以上の対策は「吸音」なので、部屋の残響音も短くなります。残響時間とのバランスを考えて対策することが大事です。 |
| ロック系がメインの場合 | デッドな部屋が適していると言われています。上記の通り比較的吸音の対策はしやすいので、きちんとチューニングをすれば解像度が良く、歯切れの良い音が聞けると思います。 |
| クラシックがメインの場合 | ライブな部屋が適していると言われています。しかし、今までの説明の通り残響を残すというのは一般的な住宅の構造ではほとんど不可能です。不整形の部屋を設計し音を十分拡散させ、なおかつ音の悪影響もなくす・・・専門業者に相談するしかありません。とりあえず、家具の配置等でベストな状態を探すしかありません。 ただし、鑑賞ではなくディスク・機器等の試聴の場合は、解像度を聞いたり音の定位を聞いたりするためデッドな部屋が必要です。 |
3.防音工事・音響工事のエピソード
音というのはすごく難しい物で、この仕事をしている間にいろいろな経験をしました。ここで、良く受けた質問・事例等をQ&A形式にして紹介したいと思います。
Q.防音工事をすると、音が悪くなると言われた。
A.本気でこのように考えているオーディオマニアが多いことには驚かされました。
ただ単に普通の部屋と同じ直方体で防音室を作り、その中で音を出せば・・・音が逃げなくなった分残響はものすごく長く、とても鑑賞するような状態ではないでしょう。運悪く知識のない施工会社に仕事を依頼してしまったんでしょうね。
また、音響対策グッズが「吸音体」であることも原因のようです。今までの説明通り、症状に応じた使い方をすれば効果を発揮するのですが、使えば音が良くなるだろうと思いこみ取り付けてみたところ・・・デッドな部屋はさらにデッドとなり、音は味気なくなった=吸音は良くないというイメージがあるようです。
Q.スピーカーの下(ピアノの足)に防振ゴム等を挟むと、階下に防音効果がある?
A.これは全くありません。これが可能ならば、防音施工業者は皆解散です。
Q.(マンションで)階下から苦情が来たので、床の工事をして欲しい。
A.オーディオ・ピアノ等の音は床の工事だけでは止まりません。音源から発生した音は空気を伝わり壁を振動させます。この振動が「音漏れ」となるため、床の工事だけでは防音効果は期待できません。床・壁・天井のすべてに対策が必要となります。
ただし、一戸建ての場合は駆体が隣と接触していないため、窓の補強、外壁面の施工だけで十分なレベルを得られる場合があります。
Q.複層ガラスは防音に効く?
A.断熱性が良く、結露もしにくいということで注目されている複層ガラスですが、防音の効果は周波数により異なります。6mm厚のガラスと3+3mmの複層ガラスを比較した場合、ガラスの厚さは同じでも、1kHZ以上の高音は良くなりますが、500〜1kHzの音域は「共鳴透過」により逆に悪くなります。普段耳にする音域がこの500〜1kHzなので、悪くなると思った方が無難です。オーディオルーム・ピアノ練習室等で窓の防音効果を上げる場合は、窓と窓の間隔を最低150mm以上とった「二重サッシ」にします。
Q.他の業者で防音工事をしたが、あまり効果がないようだ。
A.実はこのような問い合わせも結構多かった。「知り合いの大工に頼んだ」「安く工事をしてくれる業者があった」といろいろですが・・・。
実際に部屋を見に行くと、「これが防音室なの」と言いたくなるような部屋がほとんどだった。中には、ほとんど詐欺まがいの仕事をしている業者もあった。しかし、お客さんはもうお金を払った後で、これ以上どうすることもできない・・・。 防音工事を成功させる第一歩は、確かな知識とノウハウを持つ業者を選ぶことです。
これ以上書くと営業妨害にもなりかねないので、この辺でやめておきます(^^;)
趣味の範囲でのオーディオ、話の続きは掲示板で話しましょう。